摂食障害の家族心理教育
                   〜家族による家族学習会を中心に〜

              
摂食障害は若年の女性を中心に増加している病気ですが、最近は慢性化や結婚後の発症もみられ、男性の発病も増加しています。必ずしも若年女性に限られたことではなくなってきています。長期化に伴い、ご本人だけでなく家族も疲弊してしまうことが多い状態だと思います。この分科会では、摂食障害の家族心理教育やセルフヘルプ的なかかわりしながら活動しておられるご家族の方とともにどのように支えあっていくのが良いかを考えていきます。

摂食障害の治療、回復のプロセスには家族が深く関わっています。家族が関わることで摂食障害という病に対して効果が実証されてきた対応方法であり、当事者と家族の関わり、家族の問題、家族や社会と関わるうえでの問題に対応してきた家族が、今まで摂食障害の原因が家族にあるとみなされがちな時代から、回復をサポートするのも
家族であると捉えられるようになりました。ここ数年、家族支援と言葉も大きくなっています。


病を抱えることにより当事者と家族は、日常生活の中で今まで経験したことのない様々な困難に直面します。その困難をどのように捉えて対処していくかにより、病を悪化させたり、社会参加への道のりが遠くなったりもします。しかし捉え方によっては、起きている困難が、家族、当事者の対処する力をつけていく1つのチャンスでもあります。

セルフヘルプ的な家族会は、日常生活の中で起きる身近な問題を、家族が行う家族会の中で具体的な工夫、アイデアを出し合い、その中からそれぞれが自分に合うやり方を探し実践することで日常生活の改善をはかります。家族にしかできない「わかる、伝わる」ことがあります。家族の一員が病気になって間もない家族を持つ人を対象に、同じ体験を持つ経験者の家族が情報の提供者となって実施する、家族による家族のための心理教育です。

家族による心理教育は、情報提供とグループワークの両方の要素が盛り込まれています。家族向けに出版されている心理教育用テキストを使用し、病気や障害について体系的に学びながら(情報提供)同じ体験を持つ人同士、お互いの体験や知恵や工夫を交換します(グループワーク)このグループワークの部分が家族しかできない「わかる、伝わる」という、専門家が行う心理学習会と違う良さがたくさんあると思っています。

テキストを通して家族同士が語り合うことで、病気や障害に関する知識とお互いの体験を通してわかりやすく学ぶことができ、家族が本当に知りたい情報を語り合いの中から得る事ができます。提供者も参加者もお互いに同じ体験を共有していることから、語られる体験のひとつひとつに深い共感が生まれます。今まで誰にも言えなかった体験や負の感情を語ることができるようになります。

家族は新たな情報や、他の家族からの知恵や工夫そして家族同士の新たなつながりを得ます。提供者はそれに加え参加者の語りを聞き、自分の体験してきたことが他の家族の役にたつという経験をします。家族が負の体験だと捉えていたこから、肯定的な体験へと変化していくことで家族自身が力をつけていき生活の幅の広がりを実感します。
多くの方々に家族の学びと繋がりの力に触れていただけたらと思います


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